
樋渡人形店
ひとつひとつ、手から手へ。
明治時代から受け継いできた物語。
樋渡人形店
秋田県 横手市





樋渡人形店
樋渡人形店が受け継ぐ「中山人形」は、明治期に秋田県平鹿郡吉田中山地域(現 横手市)でうまれ、現在に継承されている土人形だ。
令和3年に「秋田県伝統工芸品」に指定された、新年の迎え飾りや館内のしつらえ・贈り物として“福”を添える品だ。
土の素地に鮮やかな彩色と細やかな絵付けを重ねながら作られる中山人形は、型づくりから彩色まで全て手仕事で製作されている。
干支の土鈴をはじめ、なまはげ・ハタハタなど秋田を象徴するモチーフが揃う。


5代目 樋渡徹 氏
23歳で家業を継ぎ、いまは一人で中山人形を作り続けている。
型抜き・成形・乾燥・焼成・彩色まで、工程を一つずつ丁寧に、すべての工程を手作業で行う。
「伝統工芸品とはいえもともとは郷土玩具ですので、飾って眺めるだけでなく、手に取りながら暮らしの中で付き合っていただくことで、その一体が家族の時間や記憶と重なって "家族の歴史" になっていきます。
私自身も人形も、完結しない物語の途中にいる存在として、モノを作るというより物語を次へつないでいく感覚で制作しています。」 樋渡徹 氏

1979年には羊の土鈴が、2014年には春駒の土鈴が年賀切手の図案に採用され、全国に知られるように。
代々受け継がれてきた焼き型。
表面に残る指紋が、手仕事の歴史を語る。


工房のなかは、土と道具と手の跡が、淡く残る場所だ。
人形一体を完成させるのには3〜4日かかる。
そのぶん生産数は自然と限られるが、すべて手作業なので仕上がりの表情は一体ずつ違ってくる。
特に神経を使うのは、顔の色入れだと樋渡氏はいう。


最近は海外のお客様にも選ばれていると聞いた。
樋渡氏は「どこかの国で、その家族がどんなふうに中山人形を迎え、触れ、暮らしの中で育ててくれるのか想像するとワクワクする」という。
汚れや小さな傷は、人が触れた証であり、そこに家族の気配が残る。
だから飾って眺めるだけではなく、手に取って、歴史を刻んでほしい——そんな思いで作られている。
工房には先人の職人たちが作り続けてきた人形たちが並び、積み重ねてきた時間が伺える。

